感染症予防について
生活スタイル合わせたオーダーメイドの予防を
生活習慣病予防の項で述べた通り感染症に苦しむ動物は劇的に減少しましたが、これはご家族の感染症予防に対する意識の高さの結果と言えると思います。したがって、感染症の予防の対策自体が重要性を失った訳ではなく、今後とも引き続き高い意識で予防に取り組むことが肝要と考えます。
感染症の予防は生活習慣や居住環境、体質などによって適した対策が変わってきます。動物ごとに適した予防プログラムをオーダーメイドでご提案いたします。お気軽にご相談下さい。
1. 伝染病ワクチンについて
伝染病のワクチン接種プログラムにはいくつかの方式がありますが、絶対的に正しい予防プログラムが存在する訳ではありません。当院では伝染病の発生状況や動物の生活習慣、居住環境、健康状態などを綿密に調査した上で、個体ごとに理想的なワクチンプログラムをご家族の方とともに決定していきます。「必要なワクチンを必要な回数だけ接種」することで動物とご家族にかける負担を少しでも軽減たいと思います。尚、ワクチンは従来1年毎に追加接種をすることが慣例となっておりましたが、ワクチンの有効期間が1年であるという明確な根拠があった訳ではありません。特に混合ワクチンにおいては個々の伝染病によっても有効期間には違いがあり、全てが1年で有効性を失う訳ではありません。AAHA(米国動物病院協会)やWSAVA(世界小動物獣医師会)などでは臨床試験の結果に基づいて、追加接種を3年毎にすることを推奨するガイドラインを発表しております(レプトスピラ、猫白血病ウイルス、猫エイズウイルスなど例外はあります)。当院もこの根拠に基づいて
3年に1回のワクチンプログラムを推奨しております。ご不明な点がございましたらお気軽にご相談下さい。
犬のワクチンプログラム
生後8週間目 |
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初年度 |
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※初年度は母親から譲り受けた受動免疫がワクチンに干渉する可能性があるためより確実に免疫を獲得するために追加接種が必要となります。 |
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生後11週間目 |
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生後14週間目 |
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1年後
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以降3年毎に追加接種 |
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※従来通り1年毎の追加接種を希望される場合や1年毎の接種が推奨される状況の場合はこの限りではありません。 |
※5種混合ワクチン(犬ジステンパーウイルス、犬パルボウイルス、犬伝染性肝炎ウイルス、犬アデノウイルス2型、犬パラインフルエンザウイルス)を基本として状況に応じて接種するワクチンの種類を決めていきたいと思います。
※レプトスピラワクチンは有効性が持続しないため1年毎の追加接種が必要になります。接種が必要な方のために混合ワクチンではなくレプトスピラ一種のワクチンをご用意しております。
猫のワクチンプログラム
生後8週間目 |
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初年度 |
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※初年度は母親から譲り受けた受動免疫がワクチンに干渉する可能性があるためより確実に免疫を獲得するために追加接種が必要となります。 |
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生後12週間目 |
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1年後
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以降3年毎に追加接種 |
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※従来通り1年毎の追加接種を希望される場合や1年毎の接種が推奨される状況の場合はこの限りではありません。 |
※3種混合ワクチン(猫伝染性鼻気管炎、ネコカリシウイルス、猫パルボウイルス)基本として状況に応じて接種するワクチンの種類を決めていきたいと思います。
※猫白血病ウイルスワクチン、猫エイズウイルスワクチンの接種については別途ご相談下さい。
2. 狂犬病ワクチンについて
狂犬病ワクチンは狂犬病予防法の規定により生後91日以降の全ての犬に接種が義務づけられております。その後は毎年一回の追加接種を実施します。犬のみならず人間にも感染する人畜共通感染症で、感染し発症してしまうと有効な治療法なく死に至る公衆衛生上とても重要な伝染病のため、犬を飼われる方は必ず接種するようお願いします。
3. 犬フィラリア症予防について
蚊に刺されることによって感染する可能性のある寄生虫のため、蚊の発生するシーズンの間、毎月一回駆虫薬を使用することで心臓への寄生を予防出来ます。当院ではHDU(Heartworm Development heat Unit)の概念からフィラリア症に感染する危険性のある期間を計算し、駆虫薬が効果を発揮するタイミングと安全性を加味して予防期間を決定しております。
※旭川市の過去15年間における最も早い推定感染開始日は6月23日、最も遅い推定感染終了日は10月1日です。薬は推定感染開始日の1か月後に始め、推定感染終了日の1か月後に終了しますので最短予防期間は7/23〜11/1になりますが、これは理論値のため前後に少し余裕を持って、6月中頃に始め11月中頃に終了することをお勧めします。(2012年度データ)
4. 内部寄生虫(腸や内臓に寄生する虫)の予防について
生活環境や過去の寄生歴、家に迎えられた時の経緯などを考慮して、必要に応じて駆虫薬を使用します。北海道には不幸なことではありますが、エキノコックスという寄生虫による公衆衛生上大変重要な人畜共通感染症の発生があります。注意しなければいけないことは人間と動物とでは感染の仕方も症状も全く異なる点です。キツネや犬、猫は基本的に小虫に感染したネズミの捕食により感染しますが、目に見える症状が出ることはまずありません。これがエキノコックスに対する油断に繋がるかもしれません。人間はキツネや犬の便に含まれた卵から感染する可能性があります。感染すると主に肝臓でゆっくりと長い期間をかけて成長し肝不全をはじめとした重篤な症状を引き起こします。潜伏期間が5〜30年と非常に長くこの間無症状なため発見が難しいのと、感染したら手術で切除する以外に有効な治療法がないため注意が必要です。飼育環境によっては定期的な駆虫と検査をお勧めいたします。
※猫の糞の中にエキノコックスの卵が発見されたことが2007年8月28日に判明しております。猫が人への感染源となった証拠は現状ではありませんが、当院では注意を呼びかけております。
5. 外部寄生虫(ノミやダニ)予防について
地位柄、ノミの発生はほとんどありませんが、春から夏にかけて散歩中にマダニが寄生することがしばしばあります。生活環境に応じて予防薬の定期的使用をお勧めしております。